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【 魔族の母親 】

 リレー小説『ファルガイア幻想記』より派生した、こぼれ話。
『幻想記・マナ編』より、エルゥの隠れ里で一行が夜を過ごした時の話。
 里長の話や、エルゥの人々の反応を、色々思い返しています。

   ◆ ◇ ◆

 俺達がその日の宿に、と提供されたのは、さっきの集会場と大差ない、小屋が一つの大部屋になっている、普段は倉庫か何かに利用しているらしい様な小屋だった。
 ただ、何に使っているにしろ、綺麗に掃除がなされ、床にも気持ちよさそうな敷物が敷き詰めてある。天井には紐がわたされ、それに布を垂らし、カーテンの様に幾つかに間仕切りされていた。家具の幾つかも運び込んであり、どうやら女性陣はベットにありつけるらしい。
「……結構、待遇いいよね?」
 エリナが小屋の中を見渡して呟く。俺は、ただ肩を竦めた。
 エルゥの隠里なのだから、当然、旅人を泊めるような宿はない。俺達は野宿も覚悟していたのだが、里長は寝場所と、食事まで用意していてくれていた。
「どうやら、みんなで個室(?)が取れそうだね」
 ラヴェルとシルクが中を探索し、そう嬉しそうに言った。
「んじゃ、俺はココにするわ」
 入口すぐ脇のその場所に荷物を放り込むと、ごろりと横になった。
「えー? ズルイ! じゃあ、あたしはねぇ……」
 エリナ達がパタパタと小屋を駆け回る音を聞きながら、ふと薄目をあけて、確認する。
 案の定、俺と反対の、入口挟んだ反対がわに陣取っていたのは、ラッツだった。
 俺の視線に気付き、ラッツは面白くなさそうに言う。
「寝かしつけたら、ロウギュンツァに預ける」
 主語は抜けていたが、リリィアのコトだ。
 こういう小屋で襲撃を受けた場合、一番危険なのは入口付近だ。
 この隠里は、統率がイイのか、治安が穏やかに守られている。
 が、里長は魔族に対する敵意を公然と明かした。いかに手厚くもてなされようと、妙な気を起す里人が居ない、とも限らない。
 ……常に他人を疑う性分は、鬱陶しいし、余計なコトを考えるので、面倒だ。
 俺はラッツに何も答えず、ただ目を閉じた。

 カチャカチャ
 深夜、みなの寝息に混じり、なにかの部品をいじりまわす音がたえず、微かに聞こえてくる。またラッツが妙な物を造っているらしい。
 俺は狸寝入りを決込んで、意識は小屋外に散らせたまま、昼間ジジィ(里長)が言った言葉を思い出していた。
『マザーは全世界の崩壊を望む』
『魔族はマザーの分身……命令には逆らえない』
 ……どういう意味なんだろうな?
 マザーは世界を滅ぼすのが目的で、その為に駒となる魔族(子供達)を造った。
 そう聞いていたし、そういうモノだと思っていた。……この、妙な魔族に会うまでは。
 人間と共に在ろうとする、魔族に逢うまでは。
 世界を滅ぼそうと作り出された、ソレが至上命令の存在が、何故その命令に逆らえる?
 狂ったから? だから命令に逆らえる?
 では、その狂った、しかも命令に逆らった「子供」が、何故いままで生き延びられる?
「長」を名乗れるくらい強かったから? 単に面倒で、手が回らなかった?
 では、なぜソレほど強いヤツに、狂ってしまう要素を残して「造った」んだ?
『魔族はマザーの分身……命令には逆らえない』
 逆らえない存在に、逆らう可能性を残す。
 それは、どういう意味だ?
 ラッツに限った、特殊な例なのか? その他は……たとえば<紅>は、違うのか?

 もし……命令に、逆らっていないとしたら……?

 もしラッツの今の姿が、「マザー」の本当に、ささやかに願っていたコトだとしたら?

 俺は、ゴロリと寝返りを打ち、考えるのを止めた。
 わからん。そんなコトをいくら考えたって――わからん。
「寝ろ」
 ラッツの密やかな声が聞こえた。
 身を起すと、ラッツの静かな瞳が闇の中でもはっきりと見えた。
「やっと終わったか」
 自分にすら聞こえないような小声で囁き返す。が、ラッツにはわかったらしい。
「……1時間、眠る。その間、頼む」
 言って、そのまま椅子に深く座り込む。
 俺は溜息をつくと、またゴロリと寝転んだ。
 みなの寝息が、かすかに聞こえる。
 意識をもう一度散らし、太剣がすぐに抜刀出来る位置にあるコトを確認する。

「安らかに眠る」ってのはどういう気分なんだろうな、と、そんなコトを考えながら……

   ◆ ◇ ◆

 本編とは微妙に部屋割が異なりますが、気にしないで下さい。
ついでに「カザってこんな難しいコト考えるの?」の疑問も在りましょうが、もっと気にしないで下さい(爆)

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