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【 銃の思い出 】

 リレー小説『ファルガイア幻想記』より派生した、カザの過去編・2
 幻想記開始より前に受けていた護衛の仕事途中の話。

   ◆ ◇ ◆

「僕に銃を教えろ! 絶対に、絶対に教えろ!!」
「……なんで俺に言うんだよ(汗)」
 商隊(キャラバン)の護衛を引き受けた渡り鳥達は、商隊が村に立ち寄ったわずかばかりの自由時間を、其々の方法で満喫していた。
 その中で一番の最年少らしい、アーム使いを自称する少年が、焦茶色の髪の、カザとだけ名乗ったその青年に、やっきになってまとわりついていた。
 一方カザは、というと、村の小さな酒屋で一杯引っ掛けようとしていたところで、少年の異常な熱心さに辟易していた。
「だってカザ、僕のアーム勝手に使ったじゃないか!!」
 先だって、商隊が魔物に襲われた折、少年が落した銃をカザが拾って、魔物に撃ちこんだ。そのただ一発で、少年を襲っていた魔物は眉間を打ち抜かれた。
 少年はその事を根に持って……いや、なにか深く勘違いを起こしているらしい。
「あのな、俺はこれから――」
「まあ、いいじゃないか」
 助舟(?)を出したのは、護衛仲間の渡り鳥達だった。カザの肩をポンポンと叩いて、微笑みかける。――なんとなく、彼等の背後から黒い羽や先のとがった長い尻尾が見える気がするのは、幻覚かもしれない。
「仲間の戦力が上がれば、危険も少なくなるし。ということで、ガンバレ」
 言い置いて、カザが一人で置き去りにされた。
 意気込んで「おっしゃ! とっとと教えろ!」叫ぶ少年を、とりあえずカザは一発殴っておくことにした。

「違う違う、銃を撃つ時は、当てようと思うな」
 村外れ、酒場から数本の空き瓶をもらって的にすると、ささやかな練習が始まった。
 ただし、カザは酒瓶片手に横から茶々を入れるだけという、かなり不真面目な教官だ。
「真昼間から大酒飲んで」少年の正当な批判に「的を増やしてやってる」混ぜ返す。
「当たんなきゃ、意味ないだろう!」
 ガザの指導に、少年は一々と噛み付いた(気持ちはわかる)。
「当てようと思うと指と肩に力が入る。そうすると筋肉が強張って、かえって的に当たらない」
 酔っ払いが初めて真っ当なことを言った。少年はかなり驚いてカザを見る。
「弓をやったことは?」
「あ、うん。少しだけど」
「要領は同じだ。指差すように的を狙って、引き絞る」
 少年は言われた通りに銃を構えようとして「ああ、それとな」カザのちゃちゃに水をさされた。
「お前のその銃、身体の割りに大きすぎだ。反動で軌道がぶれる」
「じゃあ、どうすればいいんだよ!」
「自分で考えろ」
 言って、酒をあおるとニヤニヤと見ている。少年は顔を真っ赤にさせたが、文句を言うよりも先に、自分の手の中にある銃へ視線を落した。
 言われてみると、確かに掌にグリップが納まりきらない。それに、こう続けて撃っていると、重い。
 少年は右手で銃を構え、左手をその下に添えて、右足をふんばる為に後へ引く。
 狙いを定め、撃った。
   ばっしゃーーん!
 練習をはじめて、初めて的の酒瓶が砕け散った!
「やった!」
「おめでとさん。後は、まあ、練習次第だな」
 カザは「筋はいいから、がんばれよ」言って、商隊の方へ歩いていく。
 その背中へ、小片は少年は不意に声をかけた。
「カザ! カザは上手いのに、なんでアームを持たないんだ?」
「苦手なんだよ」
 手だけひらひらさせて、振り返りも、止まりもしない。
 上手いのに苦手って、どういうどういうことなのかとかなり迷ったようだが、続けて聞いた言葉に、さすが不真面目な彼でも立ち止まった。
「カザは! ――人を、撃ったことが――撃ち殺したことが、あるのか?」
「……あん?」
 振り返ったのはかなり剣呑な表情だ。ただ生憎、少年は手中の銃へ目を落としていて、彼の様子に気づかない。
「この銃、親父のなんだ」
 街の警備兵だった。しかし流れ者同士の喧嘩の仲裁で、逆に殺されてしまった。
 この銃はその一部始終を見てはいても、父親を守る、何の役にも立たなかった。
「犯人を探し出して、この銃で撃ち殺してやるって、そう、思ってた」
 その為に渡り鳥になった。しかし、魔物たちと戦ううちに、魔物を、まして人間を撃つなんて、怖くなってしまった。でも、だからといって復讐心が消えたわけではない。
 犯人は、必ず探し出す。――でも
「……的を一つ撃ち貫いた程度で、うぬぼれるな。馬鹿が」
 少年はハッとして顔を上げ、そこに台詞にそぐわない表情の青年を見て、戸惑った。
「お前の腕じゃ、正確に人間の急所を撃ち貫けるようになるまで、十年かかる」
 現実的で正確な指摘に、少年は肩を落した。しかしカザはかまわず、続けて言った。
「十年後に、考えりゃいいだろ」
「でも、僕は――!」
 叫びかけた少年を、カザは強引にさえぎった。
「手の届く相手なら、その手で直接殺せ。届かず、まして迷いがあるなら、やめとけ」
 少年は驚いたようにカザを見た。母は「相手を憎むなんてお止めなさい」といった。友人達も「気持ちはわかるけど、殺したらダメだよ!」と言った。
 そんなことはわかっている。でも、それだけでは狂いそうな激情がおさまらなかった。
 しかし、カザは違うことを言った。まるで、少年の胸の内を透かすように。
「ま、どっちにしても先の話だ。答えを出すのは、まだ早いだろ」
 カザはそう言って、歩き出す。が、数歩も行かずに、振り向いた。
「ほら、行くぞ」
「え、ええ?」
「商隊の出発時間。もうすぐだ」
 的にした酒瓶を片付けておけと言い置くと、今度こそ背中を見せて歩いていく。
 時々酒を飲み、頭をガリガリかきながら。
 少年は、もう一度手中の銃を見た。
 もし「その時」になったら、自分はどんな答えを出すのだろう。
 そしてその「答え」に自分は満足するのだろうか、後悔をしないのだろうかと考えて、その為には精一杯で考えなくてはならないと、思った。

   ◆ ◇ ◆

 話の収拾がついていない上に、主人公がカザではない(汗)
 まぁ、リレー小説本編でカザがフレス村からグラスタウンまでの道案内を買って出たのは、直前での仕事が全く同じルートを逆行していたからです。
 本当は、カザは何故に銃の使用を嫌がるのかって話にしようとしていたのだが……失敗してます。
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